包括システムで考える片口スコア・・・H14年問題
昨年度、ロールシャッハの問題は包括システムのスコアリングと片口式が併記されていた、と聞いています。早く問題を見て対応したいですが、まだ手に入らない状態・・・そんな中、H14の問題を眺めていて、「!」と思いました。包括で読んでも答えはわかります!! ではさっそくやってみましょう。
H14問題42
A.知的能力は高い
B.抑うつ気分が強い
C.本人に認知されていないような内的傾向がある
D.物事を具体的、現実的に処理する能力が高い
選択肢
A B C D
a.○×○×
b.×○×○
c.×○○×
d.○×××
e.××○○
スコアから:
F+%=58%と低いので、現実検討能力は低い、知的能力も高いとは言いにくい。
A+Ad=74%と動物反応の割合が高いので、知的レベルが低い。
以上から
AとDは×、したがって答えはc.に決まる。
Bの抑うつ気分については、H+(H)=0と人間反応がないことに注目しよう。人間反応が低いと他者への関心が通常より低く、人間関係を避けようとしたり、他者への敵意あったり、抑うつ気分が強かったりする。
Cについてはよくわかりません。でも、答えのc.はなんとか選ぶことができます。
問題43
A.刺激に敏感で情緒的に反応し易いが、状況の認識は適切である
B.対人関係に内的には敏感であるが、現実にはひきこもりがちである
C.元来消極的であり、自分を主張したい欲求は弱い
D.自分の内的葛藤についての自覚に乏しく、現実との関わりは主観的である
選択肢
A B C D
a.○×××
b.×○×○
c.××○○
d.○×○×
e.×○○×
スコアから:
FC:CF+C=0.5:4.5と色彩形態反応(CF)と色彩反応(C)が形態色彩反応(FC)より多いので、情緒統制能力が低く、感情に流されやすい。
F+%が低く、また3図版においてF-反応があるので、現状認識は不適切で、主観的。
以上からAは×、Dの後半は言える。
BについてはHが低いので、後半は言える。
Cは反応数が標準、カラー図版の反応(Ⅷ+Ⅸ+Ⅹ/R)も高いほうなので、消極的で自己主張しないとは言えないので×
以上からA→×、C→×、B,D→○かもしれないので、答えはb.
問題44
A.内面葛藤について適切な観察力、表現力がある
B.状況に影響されて、衝動的に行動する傾向がある
C.不適応になっても、自己主張してしまう
D.漠然とした不安感と緊張感が強い
選択肢
A B C D
a.○×××
b.×○×○
c.××○○
d.○×○×
e.×○○○
スコアから:
F-があるので、Aは言えない。
色彩反応、カラー図版への反応からBは言える。
以上で答えはbとeに絞られる。Dは検討する必要なし。
CはF-があることやカラー図版への反応が多いことから○と判断する。
答えはe.
どうでしょうか。包括システムの解釈の基礎の基礎でなんとか答えが出ました。
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コメント
H13-40~41 ロールシャッハです。
私はこの問題全く分かりませんでした。
⊿%なんて使ったことなかったし、CRさえ何のことか忘れてました。
以下は、後から調べたり聞いたりした内容をもとにまとめたものです。
こんな問題もう出て欲しくないけど、精神医学の勉強には多少役立つかもしれません。
スコアの平均的な数字は、検査者や流派によって違うものですが、
「大幅には異ならない」と大きく構えた方がいいかもしれません。
※精神分裂病=統合失調症
参考文献は、片口安史 『改訂 新・心理診断法』(1995)金子書房 です。
まず、スコアーの基本から。
スコアーの左上から順に平均的数値を記していきます。
1、総反応数 R=25前後(大部分が20~45に含まれる)
2、初発反応時間 R1T≦30”(12.8~22.6)
3、平凡反応 P≧4(少なくとも4、一般には5はある)
4、一次的良形態反応率 ∑F+%≧70?(60%台以下だと明らかに低い)
5、内容カテゴリーの種類 CR(Content Range)=?(少ないと観念内容に乏しい)
6、体験型 M:∑C M>∑C 内向型
M<∑C 外拡型
M=∑C どちらも多ければ両向型、
どちらも少なければ(3以下くらいなら)両貧型
7、逸脱言語表現 ⊿% 正常者は 5%以下 (平均1.88%)
神経症 10%以下 (平均4.41%)
精神病者 10%以上 (平均18.15%)
H13-40
[Ⅰ]→[Ⅱ](6ヵ月後)
[Ⅰ]の特徴:⊿%=12.0と高く、∑F+%=65と低い。
そのため、P=5だとしても歪んだ反応が生じやすい。
…ということは、精神病水準の事例である可能性が高い。
スコアーの変化の特徴:
①総反応数(R)や内容カテゴリーの種類(CR)が減っている。
体験型も外核型から両貧型に変化。
…ということは、反応の生産性が低下し、観念内容が乏しくなっている。
興味・関心も低下。
豊かさに乏しくなっている。
②平凡反応が減っている。
…ということは、常識性・公共性が低下。
③∑F+%が増えている。
…ということは、現実検討能力は回復傾向。
④⊿%が減っている。
…ということは、逸脱言語表現のような病的な内容が少なくなっている。
(でも、[Ⅰ]で12.0と高かったので、精神病水準の事例という可能性が高い。
=[Ⅰ]で多彩な症状を示し、[Ⅱ]で症状がある程度安定したと考えられる。)
A.初回施行時、暫定査定は「精神分裂病の疑い」であったが,再施行時のスコアー[II]を見ると、「感情障害・鬱病」と思われる。
→[Ⅱ]が「感情障害・鬱病」であるなら、現実検討は保たれているので[Ⅰ]の時にもっと∑F+%が高くても良かったはず。
同じく、常識性も保たれているので、[Ⅱ]のPはもっと多くてもいいはず。
[Ⅱ]の初発反応時間も、鬱病にしては速すぎる。
よって×
B.妄想を主症状とする「精神分裂病」者のスコアーである。再施行時の状態は、関心喪失・社会的ひきこもり等の症状が推論される。
→[Ⅰ]で⊿%が高かったので、精神分裂病と考えてよい。
[Ⅱ]では症状が一見落着いて、陽性症状→陰性症状に移行したと考えられる。
よって○
C.慢性期の「精神分裂病」者のスコアーである。6ヶ月の間にこのスコアーで示される幅で病態の悪化・改善が繰り返されている。
→慢性期なので、基本的には6ヶ月間では大きな変化がないはず。
たとえ実際の症状に多少の変化があったとしても、ロールシャッハのスコアーは変化しないはず。
よって×
D.初回施行時、暫定査定は「対人不安」であった。このスコアーの推移からみると、「精神分裂病」の発病初期の事例と思われる。
→この場合、[Ⅰ]は精神病水準なので、「対人不安」は該当しない可能性がある。
でも、対人不安でないとも言い切れないので、保留にして後半を読む。
後半では、「スコアーの推移から精神分裂病の初期」という内容が書かれているので、 [Ⅰ]の精神病水準という予想と合致する。
しかも、6ヶ月間でスコアーが変化しているので、発病初期と考えても良い。
よって○
H13-41
[Ⅲ]→[Ⅰ](6ヵ月後)
[Ⅰ]の特徴:
H13-40にあるように、精神病水準の事例である可能性が高い。
スコアーの変化の特徴:
大きな特徴として、⊿%が大きく上昇し、∑F+%も下がっている。
…ということは、病態水準が低下し、より重度になっている。
A.不登校の高校生への施行例である。再施行時[I]のスコアーから「精神分裂病」の初期である疑いが強い。
→上記より、精神病により不登校を呈していると考えることが可能なので○
B.学生相談室に来室した学生への施行例である。最初は「精神分裂病」の初期と考えられたが,再施行時スコアーにより「強迫神経症」水準と推論された。
→「強迫神経症(一般的には神経症レベル)」にしては、[Ⅰ]の⊿%は高いので×
C.ある40歳代の女性患者への施行例である。再施行時のスコアから状態が改善し、生き生きとした情感が回復した。
→状態が改善しているので×
D.「精神分裂病」者への施行例である。薬物療法が実施されたけれども、病状は改善せず、逆に妄想思考が強まった。
→精神病水準であり、状態も悪化しているので○
投稿: ようこ | 2004.09.27 22:02
<付録>
問題44
A.内面葛藤について適切な観察力、表現力がある
B.状況に影響されて、衝動的に行動する傾向がある
C.不適応になっても、自己主張してしまう
D.漠然とした不安感と緊張感が強い
14-44上記のDについて
片口式では、m=2→内的緊張高い
P=3→極度の不安状態。知的欠陥
社会的協調性に乏しく時に著しく内閉的。
対人関係にも障害
(時には、精神病の場合すらあるんですよ)
以上からDは○になりま~す。
尚、mは無生物運動反応です。(m=2&m>2のときに内的緊張が高くなる。)>の下に=の記号を書きたかったんだけど、書き方がわからなくて。。すみません。
Pはご存知のように『公共反応』です。同じ3個でも、水準が良い反応が多ければ、『他人と協調的に仕事することが苦手でも優れた個性と能力をもっている』ことになります。
公共反応は、普通は4~5です。(これが7以上あると、過度に常識的。紋切り型の思考)
投稿: メロン | 2004.09.27 19:26
ぴょん子さん、いらっしゃい。
Hの出現率は間違いでした。包括システムでは出現率は出さないのです。3~7のH反応出現させる人が全体の67%ですというのを、書き間違えました。教えていただいてありがとうございます。
H反応の出現率は確かに20%程度です。
ロールシャッハは片口を勉強されていますか? それとも包括ですか? 私は包括しかわかりません。だからH13年の問題は歯が立ちません。あれは難問です。これからは包括かもしれないので、H15年の問題を基準に、スコアの復習をするつもりですが・・・
H12は包括で読んでも少しわかります。今、心理査定の問題を見直し中なので、明日中にはロールシャッハテストの解説をアップします。
投稿: ひろみ | 2004.09.26 01:31
はじめまして。ひろみさんのこのサイトのおかげで、指定校出身でもなくひとりぼっちで勉強している私が、どれだけ救われているか。。。感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございます。
ロールシャッハは習ったこともなく、本をかってきて一生懸命格闘しているのですが、なかなかわらかなくて苦しんでいます。
もしよろしければ、H12、13年の解説もUPしていただけますでしょうか?歯もたたない状態です。
また、Sandyさんの質問回答の部分ですが、
Hの出現率67%とありますが、HはAについで生じる反応で、20%くらいが標準と「ロールシャッハ診断法」に記載されています。どれが正しいのかの判断も出来ない未熟者なのですが、ご連絡させていただきます。間違った情報をお送りしてしまっていたら申し訳ございません。
試験2週間前でやる気↓気味のぴょん子より
投稿: ぴょん子 | 2004.09.26 00:30
1日が経つのが早いですね。泣いても笑っても後3週間。ここ2,3日、ちょっと頑張りました。勉強すると、”?”出現。ここは、ひろみさんや皆さんのお力を拝借したいと思います。
統計ですが、(4-24d)。信頼性係数のうち、内的整合性を表すのは折半法とα係数と、K-Rですか?折半法は信頼性係数を高める方法なので、それから考えると、この文章自体は○のように私には思えるのですが・・・。
13-25A)「分散分析では最初に交互作用を検定し、その後で主効果の検定をおこなう」とあります。
以下が私の調べた分散分析のフローチャートですが、交互作用はこのどこに入るのでしょうか?
標本割り当てー>実験・測定・観測ー>外れ値のチェックー>正規分布チェックー>誤差分散の等質性のチェック・・>(修正F検定)->分散分析表を書くー>主効果の検定(F検定)・・>(特定のものどうしでt検定)->どこが異なるかがわかるー>多重比較
ロールシャッハですが、ひろみさんの懇切丁寧な解説を読んでも、不勉強の私には理解できません(情けなーーい!)。片口の本や、検査法の本からスコアの基準のようなものだけでも押さえておきたいと思い、私なりに抜粋してみたのですが、それでも不明なところがあります。ご存知でしたら教えていただけませんか?
ロールシャッハは捨てる覚悟でいたのですが、ここだけでも押さえておこうかなと思っています。よろしくお願いします。
平均%・出現数
F% 75% 現実権津、知的能力
A% 40-60 知的レベル
H ? 他者無関心、抑うつ気分
FC>CF+c 安定した情緒
M>ΣC ** 内向型
M<ΣC ** 外拡型
FM+m 4―7個
F- ? 現実認識不適切、主観的
C ? 衝動性
DQ 0-1個 高いと、低い知的能力・現実把握
SumC´>wSumC ? 感情を溜め込む P 4―5個 常識性・社会性
R ? 自己統制、現実吟味、安定性
W:M ? 欲求水準と潜在能力の合致
Dd 5-15% 細部へのこだわり、不安、過敏、自
己中心性
D 45-55% 情緒の安定度
反応数 20-25 多:精神活動の豊かさ、気分の高揚、 顕示性
少:精神活動の貧困さ、抑うつ気分
M 2-4個 想像力、知的水準、内部安定、共感性At 10%以下 不安の指標
W 20% 知的側面
教えていただけると助かります。
明日は仕事なので、今日は早めに寝たいな(独り言)。
投稿: Sandy | 2004.09.22 00:19