貢献者の肖像と寄与
現代のエスプリ別冊 臨床心理学シリーズⅣ
岡堂哲雄編 貢献者の肖像と寄与 至文堂
受験のときも昨年も読めなかったので、今読んでいます。
約60人の心理学や臨床心理学で業績のあった先人たちが取り上げられています。プロフィールとおもな業績がだいたい4pにまとめられています。
人物の整理を一生懸命やっているときは、名前と業績をまず覚えますが、以外と時代背景が抜け落ちているものです。この本には、各人物がいつどこで生まれたのか、何をしてどこで亡くなったのかが記されているので、その点を補足することができます。
業績に関しては、網羅的に取り上げるのではなく、ある1つについて詳しく解説されています。ですから、開発者と手法が個別密接に結びついている場合は、その手法に関する詳しい解説を手にいれることができます。たとえば、パールズならばゲシュタルト療法、ジェンドリンの項ではフォーカシングという具合です。しかし、フロイト.S.などについては、精神力動論しか解説されていないので、その業績が網羅されている訳ではありません。
私は参考書は基本の1冊をなめるように読んで、それから他の本と読み比べて、知識を足していくのがよいと思っています。たいていの本は、複数の執筆者によって分担して書かれていて、同じ理論や手法の解説でも、執筆者の個性か強烈に出ている場合などがあります。ですから、私の場合は、今になってしまいましたが、この本は「読み比べ」に最適であると感じます。
たとえば、「心理臨床大辞典」では、家族療法の解説がわかりにくくて読みにくいです~。泣きそう。この本では、ベイトソン(ダブルバインド)、ヘイリー(逆説的介入)、ミニューチン(システムアプローチ)が取り上げられています。それぞれに、内容的にやや不足するものは感じますが、わかりやすいですよ。
同じ臨床心理学シリーズの「心理面接プラクティス」は心理療法をいろいろ取り上げていますが、それと比べてみても、同じ療法に関する説明がかなり違っていたりもします。
「読み比べ」の時間まではなかなか作れないですが、1冊だけでは意を得ない時に、参照する1冊としてもいいかもしれません。通読するのではなく、調べたいことがら人物のところから辞書を引くように読むだけでも役にたちます。
私にとってよかったのは、ロジャーズについてです。「自己一致」の意味がどうもよくわからなかったのです。この本の解説を読んで、まだ完全ではありませんが、ぼんやりと輪郭が見えてきました。
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